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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

いつもの道の、いつものお地蔵さんは。

くさつ・やぐら地蔵文化研究会 河崎凱三さん

守り守られ、お地蔵さん

地蔵盆  そもそも、なぜお地蔵さん? 草津と矢倉の両地域で「ふるさと・風景の記憶絵」制作に携わった河崎さん。その過程で高齢者が地元のお地蔵さんや地蔵盆の思い出話をたくさん語ってくれたことが印象に残ったのだとか。
 そう言われると街道沿いに、路地裏に、とあちらこちらにお地蔵さんの祠があります。お地蔵さんの縁日となる地蔵盆も、20~30の集落ごとに祠や集会所、個人宅で今も催されているようです。

 「高齢者を中心に地元の人が大切に守ってきた地蔵への祈りの文化を知ってもらいたい。地元のコミュニティを育んできた地蔵盆という地域文化を、新しい住民の皆さんにも伝えていく必要があるのではないか」と感じたのだとか。こうして矢倉と草津で仲間を募り、市民の手による調査が始まりました。

市民による調査

お地蔵さん調査冊子  調査はお地蔵さん一体一体の寸法を測り、姿形を写真やデッサンで記録していきます。次にそのお地蔵さんを大切にお世話されてきた地元の方々に時間をかけて話を聞いていきます。なかなか地道で大変な作業です。
こうして聞き取った話を一体ごとに「由来ばなし」「地蔵盆ばなし」「こぼればなし」としてまとめていきました。

 先ほど「市民の手による調査」と記しました。そう、研究会のメンバーは探求心と次代につないでいきたいとの使命感は熱いものの、その道の専門家ではありません。そこで調査した内容の学術的な裏付けや歴史、宗教的な意味について補うため、様々な専門家のところにも足を運びました。石仏の研究者や地元の住職、草津宿街道交流館…。

 こうして苦労を重ねた研究の成果を矢倉・草津それぞれに冊子としてまとめたのです。お地蔵さんだけに、親しみやすく読みやすい構成としながらも学術的にも整理された奥行きのある内容に仕上がりました。

不易流行

河﨑さん  河﨑さんは話します。
 「今ほど医療が発達していなかった時代、疫病などから子どもや大人を守って欲しい、悩みや願いごとを聞いてもらいたいという祈りの対象としてお地蔵さんが存在していました。人々の心のよりどころだったんですね。だからこそ、地域での地蔵信仰は代々大切に受け継がれてきたんだと思います。

 行事としての地蔵盆も時代と共に変化しています。例えば、夏祭りと一緒に催すことで地域の文化を伝えることができ、コミュニティも拡がりやすくなります。
 “不易流行”。カタチを変えながら新しい文化を継承していくのが『伝統を守る』ってことじゃないですかね」
 帰り道、いつものお地蔵さんにそっと話しかけてみませんか。

3つの力

地蔵調査  「これからの地域にはコミュニケーション力・発信力・コーディネート力の3つの力が大切」と河﨑さん。
なるほど、この調査研究の話を聞けばナットクです。

 とかく調査研究なんていうと専門家や研究者の話と身構えてしまいがちですが、市民ならではのアプローチ、伝え方もあるんですね。

 あなたも素朴な疑問や関心ごとを、まずは身近な人に聞いてみてはどうでしょう。
ひょっとしたらそこからあなたの新しいライフワークが始まるかもしれません。



コミュニティくさつ131号 2022.5月
My home town story 矢倉より

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