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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

夢食堂でつながる客とお店と子どもたち

フードリボン プロジェクト 「赤だし屋」店主 松下佳弘さん

夢チケットを一枚

のれん  この*フードリボン プロジェクトはなんともユニークな仕組み。来店したお客さんが食事やお酒を楽しんだついでに200円の夢チケットを購入し、店の掲示板に貼っておきます。そして子どもたちが開店前の時間帯に訪れ、そのチケットで食事をする。つまり、この夢チケットを仲立ちに、お客さんが支援者となって子どもに食を提供するわけですね。

 夢チケットでの食事は中学生以下限定ですが、親や付き添いの大人(高校生以上)も200円で一緒に食事ができます。
「その日にある余剰の食材を使うので、メニューは日によって様々。焼きそばやチャーハンだったり、焼き魚や揚げ物だったりと、お店のメニューとは違うものをつくっています」
 なるほど、フードロスの削減にもつながるわけですね。
 お客さんと地域の子ども、そして飲食店のそれぞれが無理なく笑顔になる仕組み。これがフードリボン プロジェクトです。

どんな子だって

松下さん  今、「子どもの7人に一人が貧困状態」だと言われています。コロナで更に悪化していないか心配なところです。このフードリボン・プロジェクトは貧困で苦しむ子どもたちの食を支援するための仕組みですが、佳弘さんにこだわりはありません。

「親が夜まで仕事をしていて、独りで食事をしなければならない子だっています。それに貧困なんて言うと、誰だって警戒するし、他人にも言えないでしょ。
いいんです、家庭が厳しい状態であってもそうでなくても。まずは友だちが来て、次にその友だちと一緒に来てくれれば。どんな子にだって食事を提供します。皆で来てくれたら、どの子が貧困に苦しんでいるのかなんて関係ないですしね」脱帽です。

 「活動を始めたころは支援者のチケットばかりが貯まっていき、子どもに来てもらえない状態が続きました。でも焦ったり不安になったりしませんでした。一人でも来てくれさえすれば絶対に広がってくれると信じていたから、気長に待つことができました」と佳弘さん。その最初の子が店を訪れたのは活動を始めてから3か月後のことです。

将来のお客さん

 佳弘さんが信じたとおり、今では最初に訪れた小学生が毎日来てくれるばかりか、友だちも連れてきてくれて、開店前は子どもたちの声でにぎやかなのだとか。佳弘さんも妻の浩子さんもすっかり友だちです。

 「店に来てくれる子の中には、親御さんからこのチケットの意味や200円の価値を教えてもらってる子もいるようです。それを一緒に来た友だちにも説明してくれたりして。
 家族旅行のお土産を持ってきてくれたり、大きくなったら赤だし屋でバイトしたい、って言ってくれる子もいます(笑)」
 彼ら彼女らはきっと、将来のお客さん、そして店員さんですね。

 「これからの飲食店には新しい価値が問われているような気がします。安いとかうまいとかだけでなく、店の存在自体の価値というのかな。この店がなくなったら困るって地元の人たちに思ってもらえるような店にしていきたいですね」

応援されたい

のぼり  それにしても「居酒屋と子どもたち」って、ちょっと意外な組み合わせ。なぜフードリボンを始めたのでしょう。
 「以前はひとり親家庭を支えるための寄付をしていましたが、寄付の行き先が見えなくて止めてしまったんです。私には合わなかったのかもしれません。フードリボン プロジェクトを知ったとき、こんな形の応援なら目に見えてわかりやすいなって」

 「世の中には困っている人に何か支援したいって人がたくさんいます。みんな誰かを応援したい、応援されたい。でも、どうすればよいのかわからない人も多いんじゃないかな。だからうちに限らず、このプロジェクトに参加するお店が増えてくれたら、子どもたちも、もっと近くて行きやすくなると思うんですよね」

大人も子どもも出会える場所

子ども食堂のぼり  人生は誰と出会うかで大きく変わる―。

 自らの体験を通じて実感しているという佳弘さんのモットーです。
 「だからこの店を大人でも子どもでも、色々な人に出会える場所にしていきたい。そして、ココでの出会いからその人の人生の何かが変わってくれたらいいな、と思ってやってます」

 もちろん居酒屋は夜に大人がお酒を楽しむ場所ですが、工夫次第で、地域の大切な場所になるんですね。
 開店前の午後3時半、「夢食堂」ののぼりが出ると子ども時間の始まり。
さぁ~みんな、おいでおいで。



魚貝焼きと寿司酒場 赤だし屋
大路1-8-17(アトラスタワー草津1F)
電話 596-3616
木曜定休(祝・祝前日の場合は営業)
子どもたちの夢食堂は営業日の15:30~17:00





コミュニティくさつ132号 2022.7月
「リボンが、笑顔をむすぶ。」より

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