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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

まちの工務店に集まる高齢者の声

㈱山本住建 山本雅将さん

家族の歴史に寄り添う仕事

山本さん  若い世代の人たちがよく「家を買う」との言葉に違和感を覚えるという山本さん。「家は買うものでなくて建てるもの」依頼を受けた時から施主さんの思い・家族のライフスタイルや将来の姿にまで寄り添い、プロとしてのアドバイスをしながら家づくりをしていきます。そして長い時間をかけて家を、そして家族を見守るのです。家を建てるときの思い、子どもさんの成長、そして巣立ちとセカンドライフ。家族のライフスタイルに合わせた修理や増改築、ときには子どもさんの新しい家を建てさせてもらうなど長いお付き合いになります。

ちょっとお願い

 高齢化の声が聞かれるようになって久しい。施主さんの高齢化に伴い、部屋の段差をなくす・手すりをつける・洋式のトイレに変更などの依頼が多くなりました。そのような家は、ほとんどが老夫婦だけや独居となったお宅が多いです。劇的でないリフォームですが高齢者にとっては切実な問題なんです。

 仕事とも言えないような依頼も多くなりました。「引き戸が閉まらなくなった。来てほしい―」行ってみるとレールが外れているだけだったり、「虫除けの薬があるけれどポンプの使い方がわからない」なんてこともあります。今まで花や植木の手入れをしていたご主人が亡くなったお宅です。ここまでくると工務店の仕事ではないかも知れませんが構いません。何でもないちょっとしたことこそ高齢者には大変、そして頼みにくいことなんですね。長い付き合いの中で困ったときに呼んでくれた。それで十分、お金なんていただきません。

待っていてくれるおばあちゃん

 馴染みある高齢者のお宅には、こちらから時々伺うようにしています。やっぱり気になるし、離れて住む娘さん夫婦から一人きりになった実家のお母さんに「時々、声をかけてやってください」と頼まれているときもあります。行くとね、独り暮らしのおばあちゃんがお茶とお菓子を用意して待っている。お菓子はわざわざ遠くに買いに行ってくれたのがわかる。歩くのも一苦労のおばあちゃんなのに。こうして私を待っていてくれたかと思うと胸が熱くなります。でも良い話ばかりでもない。これも馴染みの高齢者宅の知り合いの方から連絡があり「様子がおかしいから見てきてほしい」と頼まれました。行って愕然としました。家中の水道という水道、お風呂の蛇口にまで浄水器が、床下には換気扇がついていました。ご主人は目が不自由になり、奥さんは認知症の傾向がみられるようになっていた家庭、高齢者を狙う詐欺の被害にあっていたのです。詐欺の手口は巧妙で、巧く言って玄関にシールを貼っていきます。それを目安に次から次へと悪徳業者が来ていたことも判りました。連絡をくれた知り合いには「また何か勧めに来たときは息子のふりをして行くから連絡して欲しい」と伝えています。

大切なコミュニケーション

 特に独り暮らしの高齢者は話し相手がほしいと思われています。優しい話し方をされると年配の人は断われない。そしてまた詐欺につけこまれる。体が不自由になってくると外に出る機会が減り、隣り近所とのコミュニケーションもとりにくくなります。一週間に一回でも誰かが声をかけてあげればよいのですが…。地域密着の仕事をしている私たちのような出番はもちろん、もっと身近なコミュニケーションがしっかりしていれば詐欺の被害だって防げると思います。
 とはいっても働く世代は忙しい。大学生・高校生・小中学生なんかが声をかけてくれたらと思います。先日はお孫さん夫婦と同居する家の相談がありました。孫と同居もありかなぁと思うこのごろです。

取材・掲載

コミュニティくさつ103号 2014.12月号
「高齢者の不便・不安・不満を減らせ」より

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