RSS通信

まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

こころに美味しさ! 1000円居酒屋

宅老所 心

どこか懐かしい

かやぶき屋根  駒井沢町。昔ながらの住宅が並ぶ一角に、ひときわ歴史を感じる一軒のかやぶき屋根。でも忘れ去られた様でなく、手入れが行き届いた様子が素人目にもわかります。中に入ってみると、すす竹の黒光りした天井、木目がまっすぐ奥へと続くフローリング、これまた木目調の大きな2台のテーブルといった落ち着いた設え。どこか懐かしくて新しい。民家のようなお店のような。

構えんでもええ近所づきあい

かんぱい “かんぱ~い!”
冷えたビールで喉を潤した5人の男性。かつて地区別対抗ソフトボール大会で駒井沢チームとして出場したのを縁に40年経った今もつきあいが続いています。「みんな昭和40年代に駒井沢に引っ越してきた連中。仕事をしていたころは帰りも遅く、子どもをお風呂に入れてもらったりと自分よりも子どものことを知ってくれていました」「こうして集まれば健康や病院の話など他愛のないことが話題にでます。今はみんな何かしら地域のボランティアをしています」「ここへは『ちょっといってくるわ~』と家族に言って出てきます。近くだからタクシーを呼ぶ必要もないし、気楽な仲間と一緒だから堅苦しい話もない。構えんでもええのがいちばん」「気心の知れた仲間をつくろうなんて思っても、そう簡単につくれるものじゃない。こうした仲間と過ごすときは人生で大事な時間」取材に答える度に昔話や世間話に花が咲きます。さっきまでスリッパで遊んでいた癒し犬の“こころ”ちゃん(トイプードル 5才)も、いつの間にか食事の時間です。

老いていく母たち

村田さん  今日は1000円居酒屋。その名のとおり1000円で食事とワンドリンクを楽しめます。もう少し飲みたいなと思う人は自分で持ち込みます。予約制で月2回開くこの居酒屋が始まったのは昨年9月のこと。実はこの家、「NPO法人宅老所 心」の理事長、村田美穂子さんの生家です。駒井沢で生まれ育った村田さん、ご自分の母親や小さなころからお世話になった近所の人たちが老いていく姿に、「高齢になっても自分らしく暮らせるまちに」とこの自宅を「宅老所 心」としてサロンを開きました。また、これをきっかけに2004年には同NPO法人を設立、この場所で小規模多機能型居宅介護事業を始めましたが、その後、近くに事業の新たな拠点を移しました。残ったこの思い出深い生家は引き続き「宅老所 心」として、近くの高齢者が井戸端会議のように気楽に集える場所として、また高齢者の暮らしを支える地元のボランティアグループの拠点として開放しています。「囲碁・健康マージャン・カラオケ・映画会など、やりたいときに使ってもらえるよう、ここには道具や器材も揃えています。4年前から地域ケアや高齢者のサポーター会議を何度も開き、レシピなどの検討と準備を重ねて、この1000円居酒屋を始めたんです」と村田さん。

いつか故郷で

かんぱい風景  こんな話を聞いているうちに、テーブルの上には次々と手づくりの料理が並んでいきます。この日は7品。「サラダ・揚げ物・小鉢など、季節の物を取り入れながらメニューを考えています。地元の方から野菜をいただくこともあります。おいしいと喜んでもらえることがうれしい」とは調理担当で台所に立ちっぱなしの井上洋美さん。隣の男性陣は美味しい料理と楽しい会話で盛り上がってきました。
 村田さんは言います。「高齢者にとって福祉の制度を整備することはとても大切なことですが、高齢者が地元で暮らすには制度だけでない“大切なもの”があると思うんです。認知症の人や徘徊する人への対応、高齢者の暮らしを支えるボランティア活動の話など、色々なことを話し合え、支えるためのつながりが生まれてくれたらと、この居場所を開いています。いつかこの家をそんな場所にしたいと昔から決めていて、かやぶき屋根も大切に守ってきました。私は故郷のこの場所で始めましたが、草津市内でも空き家ができつつあると聞きます。ここだけでなく、草津の色々なところに地域の人が集まる場所が増えればいいですね」。ここは高齢者だけでなく、地域の人たちや高齢者を支える人たちをつなげる場所でもあるんですね。

こころちゃん  「ここは草津の軽井沢、いやいや駒井沢です。それくらい住んでよいとこってこと!」すでに舌好調になっていた男性陣の一人が言うと、「皆さんは後片付けのことも考えてちゃんと予定時間の前に切り上げてくれるんです」と村田さんは絶妙な掛け合いを見せてくれました。そろそろお開きの時間のようです。
癒し犬の“こころ”ちゃんも、スースーお眠りです。


宅老所 心
村田美穂子さんにインタビュー
当日集まった方々は藤本哲雄さん・一丸寛彦さん・野口久彦さん・北川正さん・平田文昭さん

取材・掲載

コミュニティくさつ107号 2015.11月
「まち時間・じぶん時間」より

前のページに戻る