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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

“つくる”と“たべる”の間で

野菜ソムリエ・中西真由巳さん

小さなレシピ

スナップエンドウ  琵琶湖の近く、草津あおばな館の野菜コーナーには今日も色とりどりの野菜たち。品種ごと生産者別に並べられ、朝摘みの新鮮さと安全に作られている安心感、そして“今が旬”の美味しさが伝わります。袋詰めにされたスナップえんどうの中にピンクの紙を見つけました。「からしマヨあえ」の小さなレシピと震災被災地へのエール。中西さんの野菜です。
 中西さんが野菜を作り始めたのは、子どもが小学校に入った時でした。「この子たちに何が残せるだろう…」そうしてたどり着いた答えが健康。その中心に「食」があります。だから中西さんの作る野菜は子どもたちや家族のために育てたもの。安心して食べられる安全な野菜を家族に食べさせたい。

畑を通じて、つながる

大根  とはいえ、野菜づくり自体はなにせ初めて。栽培本を読みながらの試行錯誤です。でも自然相手の農業はそう上手く本のとおりにはいきません。それで、他所の畑を見て回ったり、真似をしてみたりとお手本を変えました。そうして畑仕事をしていると、近所の農家の人たちが色々と教えてくれるようになりました。「畑を通じて人とつながる。話すことで頑張れる。皆さんが私に“やる気のエッセンス”をくれます。」中西さんの話は続きます。「同じ野菜だけでは飽きてしまうので、毎年、何か新しい野菜づくりに挑戦しています。この野菜でどんな料理ができるのかな、と考えると楽しくてしかたありません」

味を選ぶ

アイスプラント  農家に嫁ぎ、野菜づくりを始めて気づいたことがあります。それは、旬の野菜は素材の味だけで十分に美味しいということ。そのことをみんなに知ってほしいという思い。「スーパーに行くと、野菜にかけるドレッシングや調味料が棚の端から端まで並んでるでしょ。昔はマヨネーズくらいしかなかったのに。私たちは野菜の味でなく、ドレッシングの味を選んでしまっていると思うんです。旬の野菜、採れたての野菜はちょっと蒸したり、茹でるだけで美味しいんです。何もかけなくても野菜本来の甘みがあるってことを知ってほしいんです。でもね、農家のおばちゃんが、ここで一生懸命に言っても声が届かないでしょ。」冒頭のピンク色のレシピは中西さんのそんな思いが詰まっています。

 農家だからこそ、実際に野菜づくりで汗をかいてきたからこそ野菜本来の味を伝えたい。そんな思いで悶々としているとき、野菜ソムリエという資格があることを知りました。“思い立ったら行動”が流儀の中西さん。野菜の知識だけでなく、ベジタブルサイエンスといって生活習慣病予防のための栄養学、はたまた接客コミュニケーションまで“野菜”を様々な角度から見つめ直す勉強をして、ジュニア野菜ソムリエとなったのが昨年のことです。「この資格はあくまで自分に自信を持つためのもの。そして、私の言葉に耳を傾けてもらうためのものなんです」

手早く手軽に

中西さん  中西さんは仕事や子育てで忙しい若いお母さんたちにこそ、野菜本来の美味しさを知ってほしいと思っています。「小学校の給食では野菜嫌いの子どももいるでしょ。本来、食は楽しいもの。給食も楽しみにしてほしい。だからもっと小さいころから野菜の美味しさを知ってもらいたい。幼いころの味覚は体が覚えてくれます。お母さん自身が野菜の美味しさを知らないと、子どもたちには伝わらない」。だから忙しいお母さんが手早く手軽にできて美味しいものを伝えたいと中西さん。「料理に時間をかけていられない人もいます。お総菜や冷凍食品などすぐ手に入りますが、結局、野菜本来の味から離れてしまいます。簡単なことです。朝食にちょっと野菜の入ったみそ汁を食べてもらいたい。前日に昆布とだしじゃこを水に入れておいて、翌朝は味噌だけ入れたらいいから」と。

山田  「琵琶湖のある草津は本当に良いところ。野菜を美味しくしてくれる水も土も琵琶湖の恵みだし、風景だって気持ちいい。観光地に住んでいるようで得した気分です。まず草津の人に、この美味しい野菜を届け、食べることの楽しさ・大切さを伝えたい。」生産者と消費者の間には、こんなに素敵な野菜ソムリエがいます。いただきます。

取材・掲載

コミュニティくさつ109号 2016.6月
「種を蒔け」より

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