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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

在住外国人の子どもたちの“今”

松井高さん

くらしの行政相談員

松井さん  草津市をはじめ、栗東や守山で在住外国人のための「くらしの行政相談所」の相談員として、多くの在住外国人に寄り添う松井さん。大津市では南米から来た在住外国人向けに母語(ポルトガル語)を通じて、日本語指導も行っています。「市内の在住外国人の構成がここ数年、変わってきている」と松井さんは言います。

変わってきた構成

 「滋賀県ではブラジルやペルーなどの南米の人が多かったんですが、ここ数年、フィリピン・インドネシア・ベトナムといったアジア諸国から来る人が多くなっているように感じます。滋賀県が公表している外国人登録者数の統計でも、例えばフィリピン国籍の方たちは5年前と比べて2割以上も増加しています。
 工場など非専門的分野での外国人就労はこれまで日系人にしか認められていませんでしたが、その後「技能実習制度」*という制度が新設され、近年この制度を活用し非日系人を雇用する事業所が増えたためだと思います。」
 なるほど、まちの中でアジアの人たちをよく見かけるようになった理由がわかりました。

親とのコミュニケーション

 在住外国人の構成だけでなく、依然、市内に多くいるブラジルやペルーから来た南米の在住外国人の環境も変わりつつあります。
「両親の来日に伴い、南米から来た子どもの数はぐっと減り、日本で生まれ育った子が多くなりました。そのような家では何が起こるか。子どもは当然、授業や友だちとの会話を通じて日本語中心の生活です。でも、親御さんは大人になってから日本にきているので、日常生活に必要な日本語の習得は難しい。そのため、家の中で親子の会話が難しくなっているのが今の課題です。

放課後の子どもたち

 子どもたちは段々と多感な時期を迎え、学校での悩み、友だちとの人間関係と様々な問題を抱えるようになってきますが、繊細で込み入った内容を親子間で行うのは至難の業です。しかも、子どもが学校から持ち帰ってくるお知らせのプリントも、難しい言葉や漢字が使われているために親にはなかなか理解できないし、宿題を教えてあげることも難しい。親には辛いことに違いありません」。なんとも難しい問題です。
 今号のテーマである子どもたちの放課後について聞いてみました。「日本の子と同じように学童保育に行っている子はたくさんいます。ただ、スポ少はあまり聞きませんね。スポーツに熱心な子はいますが、スポ少やクラブチームは経済事情や送迎などの負担が彼らにとっては大きいので。
 最近は『公文に行っている』という話はよく聞きます。先ほどの話につながりますが、子どもとコミュニケーションをとるため、お母さんも日本語を学びたいと子どもと一緒に習っている家庭もありますよ」。なるほど、世界各国にある学習塾がこんなところで一役買っているわけですね。

あなたにできること

 遠く異国の地から来ての生活だけでも不安なのに、大変です。また、日本に生まれ育ちながらも、その日本で、一番近くにいる親とコミュニケーションがとりにくい子どもたち。私たちにできることはないのでしょうか。
 「声をかけることです。挨拶やちょっとした声かけでもいい。子どもたちにも、お母さんにも。それだけで、自分が暮らす地域社会に温かく見守ってくれる人がいると思える。
特に子どもたちには、ふれあいと遊びが大切な育みになります。難しい問題を抱えていても子どもは無邪気なものです。楽しかったことは?って聞くと、『週末に家族で買い物に出かけたんだ』って、そんな些細な日常のことも喜んで話してくれます。声をかけて話をする、聞く。そのことがお互いの文化なり、考え方の違いを理解していく第一歩です。」


*技能実習制度…海外の人材育成支援の一環として、技術を日本で習得し自国へ持ち帰るための制度

松井高さん
草津・栗東・守山で「くらしの行政相談所」相談員としてポルトガル語通訳を行う。
その他、教育相談員や日本語指導員として南米の子どもたちへの日本語指導や保護者と学校とのコミュニケーション支援を行う。
草津市国際交流協会(KIFA)多文化共生部会の部会長も務める。

取材・掲載

コミュニティくさつ110号 2016.9月
「その笑顔、まちの未来。」より

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