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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

私と家族とまちを元気にする野菜たち

笠縫東グリーンマーケット

100円という価値

 笠縫東まちづくりセンター(旧:市民センター)に入ると、「えっ!?」
なんと色鮮やかな野菜が出迎えてくれます。キュウリ・カボチャ・ミニトマト・インゲン・シシトウ・オクラ・ニラ・ナス・万願寺トウガラシ・ブルーベリー・イチジク…。どうです、この、かご一杯に並べられた野菜や果物たち。どれも独り暮らしの人にも程よい量に袋詰めされ、生産者番号と値段表示がされています。相場は100円のようです。

 これは笠縫東学区まちづくり協議会が今年から始めたグリーンマーケット事業。公募で集まった学区内の生産者が獲れたて野菜を直接、卸します。生産者は現在12人。農家の人もいれば、畑を借りて作っている人もいます。
袋詰めから値段の設定まですべて生産者任せ。センターの職員さんが販売し、売れた量に応じて手数料が協議会に入るしくみです。売れ残った商品は、生産者が引き取ります。
価 格を設定し、売れる・売れ残るという結果がすぐに伴うことで、生産者は「良いものをつくろう。他の人がつくっていないものをつくろう」と良い刺激になっているとか。

三方よしのマーケット

喜んでいるのは生産者だけではありません。消費者。そう、お客さんは主にセンターを利用する人。活動のついでに新鮮野菜が買えるのは一石二鳥。なにより地元の野菜だから、生産者の顔が直に見え、安全安心。安くて手ごろな量というのも嬉しいところです。

センターや協議会にとってもメリットが見えてきました。野菜を通じて生産者と消費者、住民同士の会話が増えたのです。
料理教室や食育講座といった事業には積極的に協力してもらえるし、最近は野菜目当てにセンターを訪れる人も増え、センターの魅力がひとつ増えたみたいです。
この日、野菜を買いにきた岶田信義さん(野村・73才)は「町内でポスターを見て、初めて来ました。近所だし、安心して食べられる野菜が良いですね」とうれしそう。

住民同士の顔が見える

協議会事務局長の多々良さんは言います。

「始めたばかりですが、ほぼ毎日完売して皆さんに喜んでもらっています。ここは都会すぎず、田舎すぎず。古くから住む人も引っ越してこられた人も、どちらも多い地域です。そのためか、野菜を提供したい人と身近で新鮮な野菜を買いたい人との需給バランスが良いのかもしれませんね。

私たちとしてはセンターや協議会のことを知ってもらい、センターを利用していただく人が増えるとうれしい。なにより野菜を通じて、住民同士の顔が見えてきたことがうれしいですね」

生産者・消費者・そして協議会とみんなが笑える三方よしの事業になりつつあります。急がず慌てず、じっくりと育んでいきたいグリーンマーケット事業です。

“買ってもらう”やりがい

 生産者の一人、有江正志さん(76才)は駒井沢町に引っ越してきて、もうすぐ50年。グリーンマーケットの生産者は農家の方が多いものの、有江さんのように趣味で野菜づくりをする人もいます。定年後に病を患ったことをきっかけに、これまで奥さんが趣味でされていた畑を手伝うようになりました。今では畑も拡大。奥さんの指導の下、野菜づくりに励んでいます。

 「野菜づくりがこんなに楽しいものだとは知りませんでした。今では毎日、朝夕は畑です。働いていたころは、畑をする妻に『ようやるなぁ』なんて言っていたのが、今では妻に『ようやるわ』なんて言われています」
夏には熱中症で1日入院したくらいの熱の入れようで、奥さんの言葉もわかります。

 「たくさん収穫できたものは近所にお裾分けしていました。でも、かえって気を遣われたり、同じ野菜が重なったり。もらってもらうのも難しいものです。グリーンマーケットは良いしくみです。自分がつくった野菜が初めて売れたときはうれしかったですねぇ。やりがいというか、張り合いがでます。今度は何を作ろうってね、どんどん勉強します。

 今はスマホがあるから、何でもすぐ調べられて素人でもチャレンジしやすいですね。夏場の水やりの水道代が高くなるから、妻には愚痴られますが、これも勉強代と思っています。
この秋からは実技がある農業大学校に行くつもり。退職してすぐは色々と遊んでいましたが、今は野菜づくりが私のすべて。これも、グリーンマーケットが後押ししてくれています」

取材・掲載

コミュニティくさつ115号 2017.11月
「まち“らしさ”を探せ!」より

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