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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

いたいのいたいの、とんでいけ。

薬剤師 松本公平さん

魔法のクスリ

松本さん  人懐っこい笑顔が印象的な松本さんは現在70歳。現役時代は製薬会社に勤めていました。昔から疑問に思ったことは突き詰めないと気が済まなかったという松本さん。子どものころ、「電車の中の蚊は、どうして電車と同じ速度で移動できるのか?」と疑問に思ったこともあったとか。
 そんな松本さんの眼が初めてクスリに向けられたのは小学生のとき。授業中、急激な腹痛に襲われた松本少年。尿道結石で即入院でした。そこで服用したクスリで痛みは2?3日で治まりました。あれほど自分を苦しめた痛みを、魔法のように取り除いてくれたクスリの不思議に魅せられたとか。

次の人生の準備

 理科好き、化学好きの少年は大人になり製薬会社に入ります。
 「今はすぐに成果を求められる厳しい時代ですが、当時の製薬会社は自由なもので、納得いくまで研究に没頭できました。お給料をいただきながら好きな研究ができる。幸せな時代でしたね」。やがて家庭をもち、充実した環境でバリバリ仕事に打ち込んだ松本さんですが、定年前の数年間は第一線を退き、時間に余裕のある部署に配属となりました。
 常に前向きな松本さん。余裕のできたこの時間を使って、今一度、クスリの勉強を始めます。実は大学時代に薬剤師の資格をとっていたものの、仕事に活かす機会には恵まれなかったのです。社内にある医薬の文献や雑誌を片っ端から読み、研修にも必ず参加します。若い人たちへの指導をしながら、自身もクスリの知識を蓄える時間になりました。
「退職後の人生を充実させてくれる貴重な準備期間となりました」と振り返ります。

“当たり前”は当たり前じゃなかった

松本さん講演風景  退職後、松本さんは薬剤師の資格を活かし、調剤薬局で第二の人生をスタート。製薬会社とは違い、薬局では直接、患者さんと顔を合わせます。「食前って何分ぐらい前がいいの?」「朝昼晩の服用だけど、子どもは昼間保育園なので…」こんな素朴な疑問や不安の相談にのるようになりました。
 「意外でした」と松本さん。
「自分では当たり前だと思っていたクスリのことを知らない人がこんなにいるとは。薬剤師として自分にできることがあるのではないか…」
 さっそく、市の学習ボランティア「ゆうゆうびとバンク」に登録
し地域のまちづくりセンターなどで高齢者や若いお母さんなどにクスリの話をするボランティアを始めました。

 小学校では「薬剤師」の仕事についても話します。「子どもたちには、〝みんなの健康を守る仕事〟って説明しています。人の健康を守るのはお医者さんだけじゃないよ。ってね。将来は薬剤師になりたいって子がいたのは嬉しかったですね」

自分のため、誰かのため

 新たな一歩を踏み出した松本さん。薬局の仕事の傍ら、今は「クスリの話」の資料づくりに追われます。
 「どうまとめたら上手く伝わるのか、わかりやすいのか。話の道筋や資料を考えるのも、また楽しい」。この資料づくりは薬局の仕事に活かすこともでき、「学び」と「実践」の両方がうまく回っています。

 最後にこれから第二の人生を迎える皆さんに松本さんからアドバイスをもらいました。「退職しても、自分のしたいこと、すべきことって、なかなか見つけられないもの。定年前から『自分のため、人のためにできること』を考え、準備しておくことをおススメします。一歩を踏み出すには勇気がいるかもしれませんが、その一歩はきっと新しい世界へと視野を広げてくれますよ」。
 松本さんの生き方も『これから』のヒントにしたいものです。
さぁ、人生はまだまだ。ポジティブにいきましょう。

取材・掲載

コミュニティくさつ117号 2018.6月
「Myチャレ まちチャレ」より

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