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まちサポくさつ (公財)草津市コミュニティ事業団

団体インタビュー

笑顔と希望とパン屋さんベーカリー&カフェわかたけ

(社福)若竹会 ワークステーションわかたけ 河村まゆみさん

パン屋の実力

食パン2コ  店を運営するのは社会福祉法人若竹会の障がい福祉事業所「ワークステーションわかたけ」。障がいのある人や養護学校を卒業した生徒などが就職するために必要な訓練ができるお店です。でも、障がい者のパン屋」とは言われたくない。「パンの味」も「お店の雰囲気」も「店員の接客」も街中のベーカリーに負けたくないと思い、障がい者施設という看板は掲げていません。

 パン工房のスタッフは主婦ばかり、良い意味で皆が素人。「自分の子どもに食べさせたい!お客様に美味しいパンを届けたい」と、お母さん目線の安心で安全なパンづくりがモットーだとか。「必要のない香料や保存料などは使わず、できるだけ良質の小麦粉とバターを使い、今朝焼いたパンを今日販売することにこだわります。だからでしょうか、パン工房のスタッフはここのパンが大好き。一番のお客さんでもあるんです」と河村さん。「食パンを週2回買いに来られる近所のおばあちゃんは『ここのパンがいちばん好き』と言ってくれます。なんといってもこれが一番うれしい声です」

社会を疑似体験

河村さん  河村さんは言います。「極端な言い方かもしれませんが、障がい者さんは家庭で保護者から、養護学校で先生から、守られて成長してきました。でも社会に出ると、家庭や学校のように守ってくれる人は少ないかもしれません。それでも様々な苦難を乗り越えていかなければならないんです。障がい者にとってここは、一般就労だけでなく〝社会の中で生きる〟という疑似体験の場でもあるんです」
 そんな思いから、ここではお給料を手渡しするとか。「ご家族は心配されるのですが、預金通帳やキャッシュカードも作ってもらい、できるだけ本人に管理してもらうようお願いしています。障がいをもちながら社会に出て、自分にできないことや困ったことにぶつかった時、周りの人に『助けてほしい』『どうすればいいのか?』を伝え、自分なりに工夫したり、時には他人の力も借りて乗り越えていく〝たくましさ〟を身につけてほしいと考えています」

運と縁とタイミング

パン作り  「障がいがあるからといって何もできないわけではありません。中には何でもできる応用性に富んだ人だっています。障がい者というのは、その障がいのためにできない部分があるだけ。誰だって、〝できないこと〟を〝できるように〟求められるのはしんどいもの。だからここでは、できることをより一層伸ばせるような支援をしています」

 「ベーカリー&カフェわかたけ」は一般就労できるよう支援するところです。そのためここで社会に出るための訓練ができるのは2年間だけだとか。ここでずっと働くことはできないんですね。「でもこの〝期限〟があるから、本人も支援側の私たちも緊張感をもって頑張れるんだと思っています。就職は〝運と縁とタイミング〟。ご縁のある会社が運よく見つかるまでしっかりと、じっくりと準備する。そして見つかったらアクセル全開です」

 就職が決まれば、その子の得意なこと、苦手なこと、できること、できないことを就職先にきちんと伝え、企業からの相談にも丁寧に対応しているとか。
 「職場にすぐに馴染む人もいれば、なかなか馴染めない人もいます。わかたけの卒業生が困ったときや、企業側が障がい者雇用で悩んだときに、私やここの職員の顔を思い浮かべてくれるよう、日々、接しています」

美味しいパンと笑顔と希望と

わかたけ店舗  「ベーカリー&カフェわかたけ」のモットーは笑顔だとか。障がい者自身が楽しみ、家族やお客さん、そして社会の誰にでも笑顔で接することができるよう、職員みんなが心掛けています。
 パンは季節に合わせて変えていきます。パンが大好きな工房のスタッフが各々アイデアを出し合い、競い合って新商品を選びます。
 そろそろ、クリスマス。
 今年はどんなパンが店に並ぶのか楽しみです。今日も〝美味しいパン〟と〝笑顔〟と〝希望〟でいっぱいのパン屋さんです。


【ベーカリー&カフェわかたけ】
 川原町宮ノ前297-3
 9:00~17:00 年末年始のみ休み

取材・掲載

コミュニティくさつ119号 2018.12月
「笑顔をつくる、あしたをつくる。」より

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